路地の街・墨東エリアに数多く存在する「袋小路」や「行き止まり」に焦点を当て、それらを観察し研究するとともに、その地位向上を目指して、さまざまな活動を企画する団体「ドンツキ協会」が、地元で発足イベントを開いた。
オルターナティブなスペース「float」内に開設された「ドンツキ研究室(ラボ)」の様子
昨年秋、アートプロジェクト「墨東まち見世」の企画会議の席で出た「向島には行き止まりが多いので、何か標識を設置できないか」という提案に対し、雑談中にメンバーが街の袋小路を、近畿地方の言葉で「突き当たり」を意味する「どんつき」と呼んだ。これに端を発し、「どんつき」をむしろ墨東エリアの個性として肯定的に捉え、その魅力を引き出し、可能性を追求しようと生まれた同協会。地元ではかねてより、その存在や活動内容が臆測を呼んでいた。
3月10日・11日、同協会は元プレス工場をリノベーションしたオルターナティブなスペース「float(フロート)」(墨田区文花2)に、「どんつき」について学び共に考えるための各種展示や、プロモーションビデオを上映する「ドンツキ研究室(ラボ)」を開設。
「ドンツキ分類学」のコーナーでは、形状の分析や主観的な評価などによって「どんつき」を「先太り型」や「ヘリンボン型」のように分類。「ドンツキ標識考」では、既存のデザインを国際的に確認しつつ、街が楽しく見えるような新しい標識を提案。「どんぐりころころ」をもとに制作した公式ソング「どんつきゴロゴロ」の楽譜や、地元の金属加工業者とのコラボレーションで試作した公式グッズ「ドンツキホルダー」など、遊び心あふれる展示も見られた。
協会員の案内で「どんつき」を体験する街歩きツアー「ドンツキ・クエスト(探求)」も実施。「float」周辺の京島・文花エリアで、参加者十数人が実際に「どんつき」に迷い込み、路地裏に生息する猫たちと触れ合う一幕も。一見、通り抜けられなさそうで、実は通り抜けられる様を、闘牛士の華麗なるマントさばきになぞらえた「股通る(マタドール)型」や、通路の先に道が見えているのにもかかわらず通り抜けられなかったり、地図上では通り抜けられるはずなのに諸事情から通行不能になったりしている「蜃気楼(しんきろう)型」、ぐるりと遠回りした末にもといた道の側に出てしまう「回遊型」など、協会内でも論争の的になっている場所は、特に参加者の大きな関心を集めた。
自由参加の「ドンツキ座談会」では、協会員それぞれが「どんつき」への熱い思いを語り、その活用方法をめぐっては「防災・防犯」「空き家対策」「地域コミュニティー」など、まちづくりの視点からも活発な議論を交わしあった。協会では今後、サブカルチャーのネタには定評のある、テレビ朝日系の情報番組「タモリ倶楽部」なども視野にいれつつ、外に向けて戦略的なアピールを続けていく考えだ。
「ドンツキ研究所」は3月17日・18日に、会場をアートスペース「yahiro 8」(八広4)に移して開設。14時からは八広・東向島エリアを散策する「ドンツキ・クエスト」も実施する(定員制のためメールでの予約を推奨)。今回は「どんつき」でのダンスパフォーマンスなども予定している。