特集

インタビュー 「すみだ活性化のキーパーソンが語る墨田と私」
澁谷哲一 墨田区スポーツ協会会長/墨田区文化振興財団 理事長(後編)

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スポーツ振興の基盤づくりとパラスポーツへの視点 

すみだ経済新聞──スポーツ協会の取り組みについてもお聞かせください。


澁谷会長:私は2022年から墨田区スポーツ協会の会長を務めています。就任当初からの課題のひとつが、法人化の検討でした。これまで任意団体だった協会を法人格として組織化することで、補助金や助成金の活用、事業運営の透明性の確保、そしてなにより「スポーツ福祉」の実現に向けた基盤整備がしやすくなります。2025年度は準備期間とし、2026年度に法人化を実施する予定です。

 法人化を進める背景には、「スポーツ=競技」という枠を超え、誰もが楽しめる、健康の維持・増進につながる活動としての位置づけを強化したいという思いがあります。障がいの有無や年齢にかかわらず、すべての人がスポーツを通じて生きがいを見出せる環境づくり。それが私の考える“スポーツ福祉”です。

 協会としては、今後、高齢者向けの軽スポーツや、福祉施設との連携による取り組みなども視野に入れながら、競技だけではない「ひろがりのあるスポーツ文化」を地域で育てていきたいと考えています。

すみだ経済新聞──スポーツ福祉にも力を入れている印象があります。


澁谷会長:墨田区ではボッチャやブラインドサッカー誘致を行いました。ブラインドサッカーはリーグの公式戦が開催され、区内の子どもたちや地域住民が観戦・応援に訪れるなど、競技への理解と関心が高まりました。試合後には、選手との交流イベントや体験会も実施され、視覚障がいのある選手たちのプレーに、参加者からは大きな感動と気づきの声が寄せられました。

 このような大会の実績を積み重ねながら、今後はパラスポーツを単なる競技ではなく「共生社会への入り口」として位置づけ、障がいのある人とない人が一緒に時間を過ごせる場を広げていくことが目標です。

相談があった、「車いすラグビーの練習場を墨田区に」という取り組みも、現在は実現に向けた相談段階ですが、今後の展開を視野に入れた動きも始まっています。

ストリートサッカーに関しても、墨田区に協会の本部があり、地域との親和性が高い競技です。今後はタワービュー通りなどの公道や商店街エリアでの開催も視野に入れています。


すみだ経済新聞──ウエブサイト※「すみスポ」の配信が始まりました。


澁谷会長区の「スポーツ推進計画」に基づいて、地域と連携しながらさまざまな取り組みを進めています。

「すみスポ」を立ち上げ、スポーツイベント情報、施設情報、加盟団体の紹介、ニュースなどを一元的に発信する仕組みを整備しました。地域のスポーツ情報を誰もが見つけやすくすることで、住民の参加機会の創出や情報の可視化につなげています。

 今後は、年齢・国籍・障がいの有無を問わず、誰もが気軽に参加できるオープンなスポーツイベントとして展開していく予定です。まち全体をフィールドに見立てる取り組みは、芸術や文化とも融合できる可能性があり、2026年の墨田区総合芸術祭との連携も視野に入れています。


ひがしんアリーナとネーミングライツの提案 
すみだ経済新聞──ひがしんアリーナ(墨田区総合体育館)についてお伺いします。命名の背景にはどのような経緯があったのでしょうか?

澁谷会長:信用金庫の会合などで地方に行くと、スタジアムや競技場、アリーナにネーミングライツを導入しているケースが多く見られます。私もそうした事例を見て、墨田区でも導入できないかと考え、区長に提案しました。

その結果、正式に入札によって「ひがしんアリーナ」という名前が決まりました。
一方で、フクシ・エンタープライズ墨田フィールド(墨田区総合運動競技場)の命名では、うちは入札で敗れました。もちろん、特定の企業に偏ることなく、公平性と透明性をもってプロセスが進められたのは言うまでもありません。



墨田区総合芸術祭、2026年に始動 
すみだ経済新聞──墨田区総合芸術祭についても伺います。 

澁谷会長:2026年に「墨田区総合芸術祭」を開催します。私は副実行委員長を務めています。芸術とスポーツの融合を掲げ、墨田区ならではの取り組みにしたいと考えています。

 企画段階から、区長をはじめ関係団体、芸術・スポーツの専門家などと連携し、地域全体で盛り上げる準備を進めています。 この芸術祭は、従来の文化イベントとは異なり、住民参加型で、まち全体を舞台に展開する構想です。芸術家と市民が共に空間を共有し、作品やパフォーマンスを通じて交流が生まれる場を創出したいと考えています。

墨田を一言で言えば「人情」 
すみだ経済新聞
──墨田区の魅力とは? 

澁谷会長:スカイツリーができてから、墨田区は変わりましたね。人口が20万人から28万人を超えるまで増えました。一時期は他区との合併の話も持ち上がる状態から、街が活気づき、若い世代も定着してきました。

芸術、スポーツ、文化、相撲、美術館、音楽ホール、飲食など、多彩な要素が混ざり合っている町です。 そして何より、人のつながりが温かい。
墨田の方々は「一緒にやろう」と言ってくれる人が多く、よそ者でもすぐに溶け込める空気があります。 

すみだ経済新聞──墨田区を一言で表現すると? 

澁谷会長:「人情」ですね。どこか懐かしく、温かく迎え入れてくれる。人と人をつなぐ街をまさに体現する言葉が人情。だからこそ、私もこの地に根を張って活動を続けてこられたのだと思います。 未来への橋渡し役として 

すみだ経済新聞──最後に、若い世代や地域の方へのメッセージをお願いします。

澁谷会長:私はもう78歳。今さら自分が主役になろうとは思っていません。自分の役割は「橋渡し」です。若い世代が活躍できる舞台を整え、支援し、つなげていくこと。それが私にできることだと思っています。文化でもスポーツでも、やりたい人がいれば、私はいつでも後押しします。

すみだ経済新聞──本日はありがとうございました。 


※すみスポ


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インタビュアー:すみだ経済新聞(長尾 円) 
カメラ:すみだ経済新聞(宮園 厚司)
編集:すみだ経済新聞(宮脇 恒)

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