
東向島出身のダンサー・鈴木一琥さんとアーティスト・カワチキララさん」が企画制作した、東京大空襲を題材としたダンスパフォーマンス「3.10 10万人のことば」が3月9日・10日の両日、アートスペース京島駅(墨田区京島3)で上演された。
東京大空襲を題材としたダンスパフォーマンス「3.10 10万人のことば」
「3.10 10万人のことば」は2005(平成17)年、浅草の「ギャラリー蔵」でスタートしたパフォーマンス。再開発に伴い2021年を最後に解体されることになり、コロナ禍の影響で公園から配信した2022年を境に、2023年にキラキラ橘商店街内の「アートスペース京島駅」に場所を移し、今年で3回目の上演となる。2日間の公演チケットは、前売りで全て完売した。
東京大空襲は80年前の3月10日未明、米軍によって行われた最大規模の空襲。B29爆撃機から投下された焼夷(しょうい)弾により、火の海と化した東京下町地区を中心に10万人以上の尊い命が、たった一夜で失われた。
ほとんどの遺体が公園に掘られた巨大な穴に折り重なって仮埋葬され、10万人以上の人々が名前の分からない遺骨となり、帰る場所を失い、両国の横網町公園内にある慰霊堂に保管されている。
当日は観客20人が、京島駅の室内に掘られた大きな穴を取り囲む形で座わる中で、パフォーマンスが行われた。照明が全て消され真っ暗闇の中、鈴木さんの静かながら鋭い動きの音を聴覚で感じながら始まったダンスパフォーマンス。バックには東京大空襲体験者の音声が流され、うっすらと照明がともされると、ダンスの動きが徐々に力を帯びてくる。
区内から訪れた女性は「東京大空襲体験者の当時の証言は具体的で生々しい。皆淡々と語り、時には笑いながら話している様子が、逆に当時のどうしようも出来なかった辛い体験を想像させられた。やり場のない怒りやむなしさ、言葉では言い尽くせない思いを体で表現する鈴木さんのダンスは圧巻」と振り返る。
鈴木さんのパフォーマンスは、体から立ち上る蒸気が冷たい空気に触れて湯気となる光景とともに、観客の視線を引きつけた。
鈴木さんは「20年間続けてきた「3.10 10万人のことば」は平和へのメッセージ。来年も東京大空襲があった3月10日に上演する予定なので、京島駅にぜひ足を運んでいただければ」と呼びかける。