
江戸東京野菜「寺島なす」の苗植えイベント「寺島なす初め」が5月11日、「たもんじ交流農園」(墨田区墨田5)で行われた。主催はNPO法人「寺島・玉ノ井まちづくり協議会(てらたま)」。
寺島なすは、江戸時代に寺島村(現在の墨田区東向島周辺)で栽培され、将軍にも献上されたとされる伝統野菜。鶏卵ほどの小ぶりなサイズとやわらかな果肉が特徴で、江戸東京野菜の研究家・大竹道茂さんとJA東京グループにより約90年ぶりに復活。現在は、同協議会が地域での普及活動を担っている。
当日は地域住民や親子連れなど30人以上が参加。苗26株を植えた。昨年は猛暑の影響で実付きが悪かったことから、今年は株数を約3分の1に減らし、より育ちやすい環境づくりに挑戦。ナスの病害虫を防ぐ効果があるとされるネギの根と絡めて植える工夫や、風対策として支柱とアサヒモで苗を固定する作業も行った。
同協議会の小川剛さんは「多世代で一緒に汗をかきながら、野菜を育てる。顔の見える関係が自然と生まれる場を、地域にもっと増やしていきたい」と話す。
イベントは9時30分の集合から始まり、苗植えと土作りを実施。土作りも、子どもたちが楽しく行っていた。その後は防災食づくりや昼食、防災クイズを交えたトークも行われ、暮らしに根ざした学びの時間が続いた。
午後には、「寺島茄子之介音頭」が披露され、子どもたちが振り付けを覚えて踊るひと幕もあった。楽曲は、農園の開設エピソードをもとにシンガーソングライター「ゆう」さんが制作した。
昨年は「すみだの力」助成を受け、約2000人が来場した「寺島なす★祭り」を7月に開催。収穫時期とイベントの集中による負担、猛暑による夏枯れなどの課題も見えたことから、今年は栽培と地域交流に軸を置いた取り組みを展開している。
小川さんは「寺島なすの知名度をさらに広げ、区内の飲食店と連携して『すみだの郷土料理』をつくる。地産地消の循環サイクルを根づかせたい」と意気込む。