
京島の銭湯「電気湯」(墨田区京島3)で10月5日、「京島の生活史」展が始まった。昭和から令和にかけての暮らしの変遷を、住民20人へのヒアリング記録と写真で紹介する。
企画したのは、電気湯スタッフで京島出身の三浦晃世さん。実家である和菓子・おにぎり店「美松」が道路拡張で閉店したことをきっかけに、地域の暮らしを記録して残したいと考えた。再開発が進む中で「まちの記憶が失われていく」と感じ、2024年12月に企画を立ち上げたという。翌2025年3月に電気湯を経営するエイントカンパニー社長の大久保勝仁さんへ企画書を提出し、墨田区の文化事業「隅田川 森羅万象 墨に夢(すみゆめ)」に応募して採択された。
会場は、地域住民の語りと古写真をもとに再構成した「生活のアーカイブ」。待合室、脱衣所、浴室の三つの空間を使い分け、計28枚の写真を展示する。待合室には昔と今の京島を比較した写真8枚、脱衣所には暮らしや商いに関する写真6枚を掲出。浴室には、三浦さんが聞き取りを行った20人の言葉と、共同水道や長屋文化など昭和期の生活を象徴する写真14枚を展示している。50代から80代までの世代ごとの記憶を紹介する構成という。
三浦さんはこれまでに20人へ聞き取りを行い、暮らしの変化を記録してきた。「無関心がいちばん怖い」「街の音が消えた」「1人で生きていけないんだぞ」といった声が寄せられたほか、「あいさつがいちばんだよね」という言葉もあったという。「顔を合わせれば『元気?』『暑いね』と声をかけ合い、見かけない人を気にかけるといった『あいさつ文化』が、京島の暮らしを支えてきたことが分かる」と三浦さん。
10月13日からは、展示で紹介したヒアリング記録をまとめた冊子を無料配布する。10月19日、26日の12時30分~14時には、一般を対象とした内覧会を開催。入浴せずに展示のみを鑑賞できる特別な時間とし、混雑を避けてゆっくりと観覧できるようにした。
三浦さんは「銭湯は世代や立場を問わず誰もが集まれる場所。まちの記憶は誰か一人のものではなく、暮らしてきた人たち全員のもの。新しく来た人にも、このまちの歩みを知ってもらい、次の世代へつなげていきたい。来年以降も開催できれば」と意気込む。
営業時間は15時~24時(日曜は8時~12時も営業)。入浴料は大人550円、小学生200円、乳幼児100円。土曜定休。10月31日まで。