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墨田・菊川で「その月と喪失」 すみゆめ企画、演劇と展示で記憶を問い直す

すみゆめ『その月と喪失』を企画した、「まびえ,」代表の伊藤聖実(さとみ)さん

すみゆめ『その月と喪失』を企画した、「まびえ,」代表の伊藤聖実(さとみ)さん

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 80年前の東京大空襲と現在につながる「喪失」のテーマを軸に展開する企画「その月と喪失」が11月22日、菊川会館ビル(墨田区菊川3)で始まる。主催は任意団体「まびえ,」と区のアートプロジェクト「隅田川 森羅万象 墨に夢(すみゆめ)」。

「その月と喪失」演劇上演のチラシ。デザインしたのは、伊藤さんの友人のタイペーさん

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 展示と演劇上演を通して「喪失」を多面的に扱う内容で、1階のミニシアター「Stranger」で演劇を上演し、2階のコワーキングスペース「WORK CINEMA Paradise」で展示を行う。

 「まびえ,」代表の伊藤聖実(さとみ)さんは、「6年前に母を亡くしたことをきっかけに、抱え続けてきた喪失感と80年前の東京大空襲の記憶が重なる瞬間があった」とし、個人史と地域の歴史が交錯するテーマを、自身が続けてきた演劇という表現で掘り下げようと企画を始めた。喪失が「形を変えながらあり続ける月」に似ているという感覚が、企画を形づくる源になったという。

 伊藤さんの思考を導いたのが、友人である池田洸太(こうた)さんの絵画「月の肌」シリーズ。老人養護施設に暮らす100歳の女性が毎晩月に語りかける姿に触れ、池田さんが受け取った言葉や感覚を277枚の絵に描き残した作品。静かで繊細なタッチの絵は、伊藤さんに大きな影響を与えた。

 この絵を手がかりに、伊藤さんは8月下旬~9月上旬、「喪失をめぐる対話の会」を全7回開き、参加者それぞれが抱える喪失について語る場を設けた。併せて、東京大空襲の体験者への聞き取りも進め、高齢化で直接話を聞ける機会が減りつつある現状も実感したという。幸い2人の体験者と対話ができ、「書籍で読んできた戦争体験の記述が、より身体的に迫ってくる感覚があった」と振り返る。

 22日に始まる展示では、対話の会の記録や空襲体験の聞き取りなど、企画を支えてきたプロセスを紹介する。29日からの演劇上演は、伊藤さんを含む3人の脚本をオムニバス形式でつないだ構成で、テーマを立体的に描き出す。

 伊藤さんは「一人一人が抱える喪失と地域が刻んだ記憶の2つの軸を、展示と演劇のどちらからでも感じてもらえたら」と呼びかける。

 展示時間は10時~18時(スタッフがいる場合のみ観覧可能)。観覧無料12月9日まで。上演時間は、11月29日・30日=16時30分~17時30分、12月1日・2日=21時~22時。料金は、一般=3,000円、学割=2,500円ほか。

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