
クラシック音楽と食を融合させたイベント「土なべでオペラごはん」が7月25日、文化酒場「押上文庫」(墨田区押上3)で開かれた。
イベントの企画・総合プロデュースとMCを担当したのは、富田剛史さん。クラシック初心者でも気軽に楽しめる「まちの音楽会」として、鐘ヶ淵出身のソプラノ歌手・小出理恵さんと、料理とピアノ演奏を担う店主・竹下文庫さんとともに、2月から毎月開催している。
富田さんは「押上文庫は、まちの文化のへそといってもいいくらい面白い店なのに、地元では意外と知られていない。もっと多くの人が気軽にクラシックの扉を開けられる機会をつくろうと思った」と話す。
オペラは竹下さんが店内のピアノで伴奏し、小出さんがその横で歌声を響かせるスタイル。シンプルな構成ながら、小出さんの声量と表現力が来場者の注目を集めた。
小出さんは、墨田区生まれ・墨田区育ち。東京音楽大学大学院を首席で修了し、イタリアでも学んだ経験を持つ。現在は二期会会員として活動中。
この日の演目はモーツァルト。「フィガロの結婚」や「魔笛」などから親しみやすいアリアを選び、歌とおしゃべりを織り交ぜながら観客との距離を縮めた。小出さんは「モーツァルトはリズムや曲調が聞くと元気になる音楽。猛暑で疲れた心身を応援したいと思って選んだ」と語る。
イベントは18世紀後半の音楽と楽器の移り変わりをテーマに、小出さんがトークと演奏で構成。チェンバロからピアノへの変化や、「フィガロの結婚」にまつわるエピソードなども紹介した。
小出さんは留学中には、モーツァルトが使っていたとされるアップライトピアノに触れた経験もあるといい、「ピアノという新しい楽器の登場で、音楽の表現が大きく広がった」と解説。参加者からは「楽器の進化が音楽の進化につながっていることがよく分かった」との声も。
最後は、墨田区の歌ともいえる「花」が演奏され、小出さんのリードで参加者全体が唱和しながら締めくくられた。
富田さんと竹下さんは「すみだトリフォニーホールがある墨田区の音楽文化の土壌を、市民レベルから盛り上げたい。地域の方にもクラシック音楽の魅力を発信する場として今後も企画していく。美味しい料理やお酒と、圧倒的な声量の小出さんの生歌が楽しめるので、ぜひ足を運んでほしい」と呼びかける。
次回の開催は8月29日。申し込みは「土なべでオペラごはん」の公式サイトで受け付けている。