
※この記事は、2025年9月8日に収録された座談会の記録、および2026年1月現在の追記レポートで構成されています。
(敬称略)
2025年9月8日、すみだ経済新聞・宮脇の呼びかけにより、墨田の子育て・地域活動を牽引する3人のリーダーによる座談会が開催された。
この3人が最初に出会ったのは2025年6月。墨田区で多数のイベントを開催するキーパーソンの1人、多賀健太郎さんが「墨田で活動するこの3人がつながれば、面白いことが起きる」と引き合わせの会を設定したことが転機となった。
多賀さんというハブを介したことで、地域を動かす同志としての活躍が始まった。
当日は司会にすみだ経済新聞の長尾円を迎え、発起人である多賀さんも監修役として参加。2時間にわたり、それぞれの原点から、「10年後のまちのビジョン」までを語って貰った。
【前編】「着火」する才能と、母としての「白旗」
■ 01:活動の原点——「子供と一緒に」という純粋な願い
長尾(司会): 今日はよろしくお願いします。宮脇さんから「この3人の化学反応をどうしても形にしたい」と呼びかけがあって実現した座談会ですが、まずは皆さんの活動の「きっかけ」からじっくり伺えますか。

ハッピースマイル代表・皆川未来さん
皆川未来(以下、皆川): 私は、もともと2024年の春から活動をスタートしました。きっかけは、純粋に「自分の子どもたちと一緒に活動したい、何かを形にしたい」という思いからです。それまでは写真を撮られるのも、自分の気持ちを外に出すのも苦手な普通の専業主婦でした。そんな中、親子あそび『元気いっぱい』の立ち上げをきっかけに、親子で楽しめる場づくりを地道に続けていく中で、少しずつ活動の幅が広がっていきました。

NPO法人日本わくわくキッズ実行委員会の代表・牧野裕美子さん
牧野裕美子(以下、牧野): 私はNPO法人日本わくわくキッズ実行委員会の代表として、モンテッソーリ教育の講師として、各地で「体験型の親子イベント」を展開してきましたが、墨田という街のエネルギーはとても高く、情にとんでもなく厚いことを感じていました。私のビジョンは「わくわくする体験で笑顔あふれる世の中にする」こと。子どもたちが五感を使って思いきり遊べる教育環境や、地域の方々がつながって地域全体で子育てする街にしたい、という思いで活動しています。

すみだ子育てメッセ実行委員長・森下八尋さん
森下八尋(以下、森下): 私は普段、企業向けのコーチングやダイバーシティ推進を本業としていますが、私自身も墨田で3人の子供を育てる母親です。2017年からパパママ向けコミュニティを細く長く続けてきたご縁があり、今年度から「すみだ子育てメッセ」の実行委員長を引き継ぐことになりました。
■ 02:東白鬚公園の突破——「起爆剤」としての皆川さん
長尾: 6月の出会い以降、お互いの活動にどんな印象を持っていますか?
森下: 皆川さんは本当に「0→1」の人。東白鬚公園(都立公園)での火起こし許可を、サービスセンターに3回アタックして勝ち取った突破力はすごいです。普通なら「ルールだから」と諦めるところを、彼女は「遊びの中で防災を学ぶイベントを開催したい」という情熱だけでセンター長さんを説得し、「やりましょう」と言わせてしまった。まさに「起爆剤」です。
皆川: 私はただ、かまどベンチがあるのに、誰も使い道を知らないのが勿体ないと思って(笑)。「これ、誰が火をつける想定なんだろう?」って気になったら、もう止まらなくなっちゃったんです。
牧野: 皆川さんが現場をこじ開けて「着火」したところに、私がモンテッソーリ教育の視点で、子どもが本来持っている力を引き出すための「体験」をデザインする。そして森下さんがコーチングの視点で「対話」を整え、仕組み化していく。この3人の視点が揃うと、単なるイベントが「墨田のまちの文化」に変わっていく予感がします。
■ 03:モヤモヤ10年を経て上げた「白旗」
長尾: 3人の共通点は、リーダーであると同時に、子育ての「当事者」であること。森下さんの「モヤモヤ歴10年」という言葉には、深い重みがありました。
森下: 私は長女を産んでから10年、ずっとキャリアと育児のバランスに悩み続けてきました。「自分が頑張らなきゃ、全部やらなきゃ」と孤独に戦っていたんです。でも、3人目が生まれた時に、ついに「あ、一人で全部やるのは物理的に無理だ」と悟って。
長尾: そこで、どうされたんですか?
森下: ようやく周りに「白旗」を上げたんです。「助けて」「一人じゃできない」と。そうしたら不思議なことに、周りが助けてくれるだけでなく、私自身が軽やかに活動できるようになり、それを見て子供たちが勝手に自立し始めました。私が完璧でいようとするのをやめた時、家族もチームも回り始めたんです。