
すみだ水族館(墨田区押上1)で4月に生まれた2羽のマゼランペンギンの赤ちゃんが、間もなく生後1カ月を迎える。ひなたちは順調に成長しており、館内では公開に向けた準備や関連展示も始まっている。
4月10日に生まれた「あられ」は、父「アジサイ」と母「チョコ」の間に生まれた2羽のきょうだいの1羽。体重は1318グラム、体長は約30センチ、翼の長さは9センチにまで成長している。
4月14日に生まれた「つづみ」は、父「パイン」と母「たいこ」にとって初めての子。体重は861グラム、体長は約25センチ、翼の長さは11センチ。母の「たいこ」は2015(平成27)年に同館で生まれたペンギンで、すみだ水族館生まれのペンギンが母親になるのは初めて。いずれも性別はまだ分かっていない。
飼育スタッフの山口真穂さんによると、あられは「おっとりした性格で、巣の中でのんびりと過ごす姿が多い」という。つづみについては、「鳴き声が大きく、食欲旺盛。ごはんの時間になると全力でアピールしてくる」と話す。
餌やりは1日6回行っており、イワシのすり身をペースト状にした餌を毎回与えている。1日の食事量は体重の約4割が目安で、多い日には100グラム以上体重が増えることもあるという。
ひなの体調管理は、飼育スタッフと獣医師が日々連携して行っている。食欲や動き、体重に加え、糞の状態まで細かく確認しながら、健康状態を見極めているという。
スタッフがつけている飼育日誌は「育児日誌」のような存在。「歩いた」「目が開いた」など日々の変化を書き留め、昨年の記録と照らし合わせたり、翌年の繁殖に向けた参考資料として活用したりしている。
ひなたちの飼育には、親鳥と同じ色や形をしたペンギンのぬいぐるみも活用している。飼育スタッフの高嶋悠加里さんは「見慣れない成鳥に驚かないよう、日常的にそばに置くことで慣れさせる目的がある」と解説。以前、ぬいぐるみを使わずに育った個体は、初めて成鳥を見た際に驚いてしまったが、現在はこうした工夫によって自然に成鳥の中に溶け込めるようになっているという。
高嶋さんは「アルゼンチンの水族館を訪れた際にも、ぬいぐるみを使ってひなを慣らす取り組みが行われていた」と話す。ぬいぐるみは、ひなにとって親鳥の代わりとして安心感を与える存在になっている。
高嶋さんは「2羽は6月下旬から7月上旬には飼育プールデビューする予定。それまでに水に慣れ、泳ぐ訓練や館内散歩などを通じて、展示物や人に慣れる練習も行う。訓練の一環でスタッフの朝礼に出席することもある」と話す。館内散歩については「人間でいうと公園デビューみたいな感じ。スタッフがそれぞれを担当している子がいる点では、ママ友が多い環境かもしれない」と高嶋さん。
高嶋さんは国内の他の水族館の飼育スタッフとも日常的に連絡を取り合っており、オンライン上のチャットを通じて飼育方法や健康管理の情報交換を行っている。高嶋さんは「経験や知見を共有できる場があることで、よりよい飼育環境をつくることができる」と話す。
館内では5月7日から、ひなの成長を体感できる展示「ペンギンすたすたスタンプ」を展開。体長や体重の変化を実寸大スタンプなどで紹介する。