
映画「ゆめパのじかん」の上映と講演会が10月5日、「すみだ生涯学習センター(ユートリヤ)」(墨田区東向島2)で開かれた。7月13日に初開催された「すみだ生きづらいこどもフォーラム」の2回目のイベントとなる。
映画は午後と夜の2回上映し、その間に講演会を行った。主催は押上でフリースクールなどを運営する「よりみち自由室」。
「ゆめパのじかん」は、「川崎市子ども夢パーク(通称=ゆめパ)」の子どもたちの姿を捉えたドキュメンタリー映画。2022年7月に劇場公開され、現在も全国各地で自主上映が行われている。墨田区内では、2023年の「なつのあそび大学」の企画として上映された。
講演会は、映画の中にも登場する「ゆめパ」元所長の西野博之さんによる約1時間の講演で始まった。6畳と4畳半の小さなアパートから居場所づくりを始め、40年近く不登校の子どもたちと向き合ってきた西野さん。特に親を支える取り組みに力を入れてきたという西野さんの言葉に、会場に来ていた保護者が大きくうなずいたり、涙ぐんだりする姿も見られた。
続く座談会では、西野さんのほか、「よりみち自由室」の山口亮(まこと)さん、「フリースクール be you」の古野ひとみさん、12月に不登校支援を始めるという「ラーニングラボすみだ」の大塩達(いたる)さんが登壇し、墨田区の現状を踏まえたディスカッションを行った。
大塩さんからは保護者との接し方、山口さんからは団体同士の連携やすみ分けに関する話題が出たほか、古野さんからの「西野さんの今後の展望は?」という問いに対して、西野さんは「子どもたちがもっと生きやすくなる『他者の痛みに共感できるまちづくり』を目指したい」と答えた。
西野さんは「地方に呼ばれると大抵、行政の人や議員、学校関係者が来てくれる。昨日も埼玉のある町にいたが、町長、教育長が最後まで僕の話を聞いてくれた。こういう人たちが、ここに来て一緒に学ばないと地域は変わらない」という指摘に対して、山口さんは「墨田は良くも悪くも祭り好き。楽しいイベントにはみんな関心を向けるが、さまざまな事情でそこに参加できない人がいるという事実には目を向けない傾向がある。課題を抱えた人たちに対する鈍感さを感じている」と応じた。
講演会の締めくくりには、子どもたちが主体となって運営する「すみだユースセンター」のクラウドファンディング計画や、「トーキョーコーヒーすみだ」についての発表が行われた。「トーキョーコーヒー」は「登校拒否」のアナグラム。「問題は子どもの不登校ではなく、大人の無理解」という視点から、地域の大人たちが集まって社会を変えていこうというムーブメントで、全国400カ所以上に広がっている
山口さんは「西野さんからも話があったように、もっと地域の関係者が本気で取り組まなければ地域は変えられない。ユースセンターやトーキョーコーヒーなどの新しい取り組みを通して、もっと発信力、影響力を高めていきたい」と意気込む。