墨田区産業共創施設「SIC(Sumida Innovation Core)」(墨田区錦糸4)で10月29日、1周年記念イベントが開催された。
同施設は、創業初期スタートアップと墨田区内の学生起業家支援を軸に、産業振興に資する地域ネットワークを活用した「価値共創・交流・発信」を行うのが特徴。
当日のイベントは2部で構成し、第1部では山本亨墨田区長による開会のあいさつの後、東武鉄道の青柳健司執行役員がSICの事業連携パートナーとしての参画について説明を、続いてSICが支援するスタートアップ企業4社が、共創事業の成果報告を行った。
成果発表会ではまず、子ども靴の廃棄問題に取り組む「SlowFast」の谷口昌優さんが、子ども靴の廃棄問題を解決するため、リユース品のレンタルと新商品の販売を行い、回収後は次の顧客につなげる循環型ビジネスモデルの構築について説明。東武電鉄の特急列車スペーシアXとのコラボ商品開発について発表も行った。
ニュースポーツの普及に取り組む「BAKUAGE」は、「ナガセケンコー」の技術を生かした「ピックルボール」用品の共同開発について報告を行い、同社の渡邊史郎社長は「ピックルボールはアメリカで人気が高まっているスポーツで、両社が連携して用具の開発と国内市場への投入を目指している」と解説する。
「IGSA」と「千葉大学予防医学センター」はAIを活用した認知症スクリーニングサービスについて発表。その中でIGSAの松島創一郎社長は「スマートフォンアプリで簡単に検査ができ、千葉大学の実証実験を通じてサービスの改善を図っていると」発表した。
「セラピア」の田中圭社長はDXコーチングサービスを活用し、東京東信用金庫と連携して区内企業のDX化を支援する取り組みについて、「区内企業が区内企業に教えあう仕組みを作り、地域のDX化を推進している」と説明。DX支援サービスを導入した「バキュームモールド工業」の北澤正起社長からは導入効果について発表があった。
成果発表会の総括で山本区長は「SICに参加している企業は大小さまざま。今回の発表であったように、中小企業と大手企業のコラボも実際に起こり得るのがSIC。アメリカンドリームのようなすみだドリームを実現してほしい」と期待を寄せる。
続く2部では、宇宙関連のスタートアップ企業「うちゅう」「SkySense」「Star Signal Solutions」「OUTSENSE」4社によるピッチプレゼンテーションが行われ、各社は宇宙分野における自社の事業概要や製品・サービスの紹介、今後の展開や他社との連携の可能性について説明した。
宇宙教育を通じて宇宙人材の育成に取り組む「うちゅう」は、子ども向けのイベントや教室の運営、学校プログラムの提供などを通して宇宙への興味関心を高め、将来的に宇宙分野で活躍できる人材を育成することを目指すと発表。
続いて、成層圏に飛行船型の観測機を配置し、高解像度の地球観測データを提供する「SkySense」は「既存の衛星や航空機よりも安価で高精度なデータを提供できるのが当社の強み」と説明。
人工衛星の軌道解析と衝突回避のナビゲーションシステムを開発する「Star Signal Solutions」は「宇宙ごみによる衝突事故を防ぎ、宇宙環境と地上の生活を守ることを目指す」、折り紙工学を応用した構造物の設計・製造を行う「OUTSENSE」は「宇宙での居住施設の開発に取り組むほか、地上でも、さまざまな製品分野への展開を目指す。墨田区の事業者との連携にも取り組みたい」とそれぞれ発表した。