
落語を題材にした映画「みんな笑え」の上映に関連したトークイベントが3月23日、墨田区内のミニシアター「Stranger(ストレンジャー)」(墨田区菊川3)で開催された。
主演の野辺富三さん、鈴木太一監督、落語家の立川吉幸(きっこう)さんらが登壇し、映画の制作秘話や落語の魅力について語った。当日の上映回は満席となり、会場は熱気に包まれた。
同作品は野辺さんが演じる50歳の2代目落語家・斎藤太紋が、父であり師匠でもある先代・勘造(渡辺哲さん)を自宅で介護しながら、不器用ながらも演芸の世界で生きる姿を描く。主人公が落語と漫才、親子や師弟関係、介護問題、いびつな恋愛模様が交錯するヒューマンドラマ。共演には、辻凪子さんのほか、片岡礼子さん、渡辺哲さん、今野浩喜さんらが名を連ねる。
当日は15時からの上映回後、16時30分から舞台あいさつが行われた。野辺さんは30年間の舞台俳優としての経験を振り返り、蜷川幸雄さん演出作品への出演や、プロデューサーの沖正人さんとの出会いについて語った。撮影については、「特に浅草演芸ホールでのシーンは緊張したが、徐々に役になじんでいく感覚を得られた」と振り返った。鈴木監督はキャスティングの経緯について説明し、特に辻凪子さんの起用理由について「お笑いへの深い理解と映画への熱意が決め手になった」と明かした。
「Stranger」2階のコワーキングスペース「ワークシネマパラダイス」で行われたトークショーには、鈴木監督、立川吉幸さん、野辺富三さん、撮影監督の福田陽平さんが登壇。立川さんは、自身の落語家としての経歴や、落語界の裏話や修業時代の苦労、談志一門に所属していた際の体験なども交え、22年かけて真打ちに昇進したエピソードを披露した。
撮影については、特に落語シーンの演出の難しさが話題に。監督と福田陽平さんが、寄席の空気感を再現する工夫や、主演の野辺さんの落語指導のプロセスを説明。実際の落語家からのフィードバックを受けながら、リアリティーを追求したことを明かした。
立川さんは映画を鑑賞後、「落語が題材の作品では違和感を覚えることも多いが、この映画はとても自然で、心に響いた」とコメント。特に、主人公の不器用さや落語家としての葛藤がリアルに描かれており、「実際の落語界にも、こういう人はいる」と共感を示した。
鈴木監督は「この映画は落語家の人生を描きながらも、誰もが共感できる物語になったと思う。劇中には背中を押すシーンがあるが、それは人生の応援の意味を込めたもの。観た人が少しでも前に進む力を感じてもらえたらうれしい」と締めくくった。
上映時間は、24日・25日=20時15分~21時45分、26日・27日=18時20分~19時50分。入場料は一般1,800円ほか。3月27日まで。