
「墨田区産業共創施設(SIC)」(墨田区錦糸4)が主催する工場見学イベント「すみだものづくりキャラバン」が3月13日に開催された。
同イベントは、墨田区内のものづくり企業を訪問し、工場の雰囲気や職人の技術を体感することで、新たなアイデアを生み出すことを目的としている。
今回は「樹脂(プラスチック)成形」をテーマに、真空成形を手がけるバキュームモールド工業と、射出成形を行うチバプラスの2社を訪問。ナビゲーターは、デザイナーでSICメンター会員の大井雅人さんが務めた。
当日はSICメンバーら12人が参加。バキュームモールド工業(墨田5)では、北澤正起社長が会社概要と真空成形技術について詳しく説明。同社は60年以上の歴史を持ち、墨田本社工場、埼玉工場、大阪事業所の3拠点で事業を展開している。特に真空成形用金型の設計・製作では日本のトップシェアを誇り、コンビニエンスストアの弁当容器金型製作では市場シェア30~40%、お祭りの食品容器では90%のシェアを持つという。
真空成形技術については、薄いプラスチックシートを加熱し、金型に押し当てながら空気を抜いて成形する技術により、コンビニの弁当容器やお菓子の包装、祭りで販売されているお面、新幹線のテーブルなど、さまざまな製品が生み出されている。
説明の後、一行は工場内の組立工程を見学。プレートや枠の構成方法、金型の温度管理、加熱プロセスの重要性について説明を受けた。
北澤さんは、環境負荷を軽減する「使い捨てられない製品」の開発に取り組んでおり、その成果として今年1月、フランスの展示会「メゾン・エ・オブジェ」に出展。海外バイヤーからも高い評価を受けたという。
続いて訪問した射出成型を行うチバプラス(堤通2)では、千葉勇希社長が50年前からの工場施設の歴史と現状について説明。かつてこの地域には町工場が多く集まり、防災団地として再開発されたが、後継者不足により現在は7社のみが残っているという。千葉さんは「今後、施設は大きな変革期を迎え、来年から再来年にかけて建物の改築が予定されている」と話した。
その後、参加者は2グループに分かれ、医療用製品を製造するクリーンルームと、文房具や車の部品などを製造する現場を、それぞれ見学した。見学後の振り返りで千葉さんは「金型はクライアントの資産」と強調するなど、ものづくり現場の仕組みや構造について解説。大井さんは釣具のルアーとプラモデルを組み合わせた「ルアープラモ」など、新しいアイデアにより、ものづくりの現場の可能性は広がると説く。
工場見学後は、参加者同士の交流会も行われ、活発な意見交換が行われた。