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すみだ経済新聞 編集長インタビュー【後編】
宮脇恒さんが語る「まちを編集する」 月間1万PV未満から始まった、すみだ経済新聞

住吉のシェアハウスから始まった再出発。
毎日のように墨田のまちを歩き、「面白いな」と感じた宮脇恒さん。
しかし、すみだ経済新聞のスタートは決して順風満帆ではなかった。

知り合いゼロ。伝手もゼロ。月間PVは1万にも届かない。
周囲からは「無謀だ」と言われながらも、宮脇さんは地域メディアの立ち上げに挑んだ。
後編では、月間100万PVへと成長する原点となった「10万PV達成までの道のり」と、その先に見据える未来について聞いた。

伏見経済新聞で学んだ「現場主義」

すみだ経済新聞:
すみだ経済新聞の前に運営していた伏見経済新聞時代は、どんなスタイルだったのでしょうか。

宮脇恒さん:
2024年6月まで運営していた伏見経済新聞時代から、自分で現場へ行って、地域のニュースを届けるというスタイルでした。

街を歩いて、人に会って、話を聞いて記事を書く。
それが自分の基本ですね。

 

すみだ経済新聞:
今のすみだ経済新聞にもつながっています。

宮脇恒さん:
実際に行かないと分からない空気感ってあるんですよ。
人の表情とか、会場の熱量とか。
そこは今も変わっていません。

墨田区でのゼロスタート

すみだ経済新聞:
すみだ経済新聞は2023年8月から始まります。
当時はどんな状況だったのでしょうか。

宮脇恒さん:
中編でお話をしたように、東京へ拠点を移したことと、コロナ禍を経ていろんな経験をしました。
伏見経済新聞の後半は遠隔運営でしたので、「地域密着型取材」を改めて大事にしたいと思いました。

2023年8月に、すみだ経済新聞をスタートしました。

 

すみだ経済新聞:
最初から全力投球だったわけではなかったそうですね

宮脇恒さん:
そうなんです。

実は最初の10カ月くらいは、他のプロジェクトも同時進行でやっていたので、自分自身はそこまで入れていませんでした。
運営もアルバイトにほぼ任せていた状態でしたね。
 

すみだ経済新聞:
数字はどうだったんですか?

宮脇恒さん:
立ち上げ直後は1万PVにも届かなかったです。

正直、このままだと厳しいなと思っていました。
 

すみだ経済新聞:
しかも地縁もなければ、知り合いもいなかった。

宮脇恒さん:
全然いなかったですね。

知り合いも伝手もない墨田区でメディアを始めるなんて無謀だって、結構言われました。
でも、賛同してくれたアルバイトのKくんがいて、一緒にスタートしました。

「絶対無理」と言われた10万PV

すみだ経済新聞:
何か指標や基準はありましたか?

宮脇恒さん:
目標は10万PVでした。

 

すみだ経済新聞:
当時から掲げていた数字ですね。

宮脇恒さん:
知り合いに「目標は?」と聞かれて、「10万PV」と答えたら、「絶対無理」「時間の無駄だから他のことをやった方がいい」と言われました。

すみだ経済新聞:
どう感じましたか?

宮脇恒さん:
まあ、それで逆に火がつきました(笑)。

 

すみだ経済新聞:
なぜ10万PVだったのでしょうか。

宮脇恒さん:
PV(ページビュー)はネット媒体にとって発行部数みたいなものなんです。

見てくれる人が増えれば媒体価値も上がる。
広告価値にもつながる。
事業として続けるための一つの基準が10万PVでした。


長尾さんと作った「すみ経のルール」

すみだ経済新聞:
何か打開策はあったんですか?

宮脇恒さん:
長尾円さんにコーチングをお願いしました。
彼女は2019年からずっと一緒に仕事をしてきたし、インタビュー企画もサポートしてくれていますけど、本職はプロのコーチです。
 

すみだ経済新聞:
どんな話をしたんですか?

宮脇恒さん:
ルールを決めました。

1つ目が月20本以上記事を書くこと。

2つ目がイベントへ参加すること。

3つ目が月50人と名刺交換すること。

4つ目が自分で取材ネタを集めること。

5つ目が取材依頼と食事の誘いは断らないこと。

6つ目が仲間を集めること。

そんな感じです。

 

すみだ経済新聞:
意外とシンプルですね。

宮脇恒さん:
そう、普通なんですよ(笑)。

でも1年やってみると、全部意味がありました。
何より大事だったのは、信用してもらえる媒体になることでした。

市民記者という「共創コミュニティ」

すみだ経済新聞:
現在は20人近い市民記者がいます。
どうやって仲間を増やしていったんですか?

宮脇恒さん:
最初から市民記者のネットワークを作ろうと思っていたわけじゃないんです。
ワンオペでやるには限界がある。
属人化を仕組み化するためには?と考えて、「墨田区まち活カイギ」という市民活動のイベントで、「一緒に墨田区の広報をやりませんか?」と呼びかけたところ、すごく反応が良かった。

それがきっかけになって、
イベントへ行って、取材して、人と会っているうちに、少しずつ仲間が増えていった。

すみだ経済新聞:
20人まで増えました。
講演では「共創コミュニティ」という言葉も使っています。

宮脇恒さん:
気が付けば20人も仲間がいます。

ただ単なる記者クラブじゃないんです。

カフェ店主、商店街会長、会社員、イベント主催者、写真好きな人、地域活動している人。
いろんな人たちが街の「今」を届けてくれている。
 

すみだ経済新聞:
どんな存在ですか?

宮脇恒さん:
地域の熱量を届ける仲間だし同志です。
コミュニティーでもあるし、応援してくれるありがたい存在です。


地域メディアはニュースを流す装置じゃない。
地域の熱量を循環させる装置だと思っています。
 

「まちを編集する」とは何か

すみだ経済新聞:
改めて「まちを編集する」とは何でしょうか。

宮脇恒さん:
シャノワが考える地域メディアの役割は、
人をつなぎ魅力を発掘しまちを編集することです。

地域メディアの本質は出来事を伝えることだけじゃない。
地域の小さな熱量を見つけて、人の行動につなげること。
僕らが届けているのはニュースだけじゃない。
人の表情、言葉、行列、会場の熱気。

地域の空気そのものなんですよね。


「信頼を構造化」するフェーズへ

すみだ経済新聞:
今後の展望を教えてください。

宮脇恒さん:
次は「信頼を構造化」するフェーズだと思っています。

記事を書いて終わりじゃなく、地域の信頼を積み上げて、つないで、広げていく。
その仕組みを作っていきたいと思います。
 

すみだ経済新聞:
具体的には?

宮脇恒さん:
まずは「すみだパレット」です。

今準備を進めている地域ポータルサイトですね。
すみだ経済新聞がニュースを届けるメディアだとすると、すみだパレットは地域の情報や活動、人を蓄積していく場所です。

イベント、インタビュー、地域活動、写真、まちの記録。
ニュースだけでは残らない地域の資産を集めていきたいと思っています。
 

すみだ経済新聞:
ニュースとは役割が違う。

宮脇恒さん:
すみだ経済新聞は「動」のメディア。
今起きていることを伝える役割があります。
一方で、すみだパレットは「静」のメディア。

地域の魅力や人、活動を蓄積していく場所です。
記事を読んで終わりじゃなく、興味を持った人が次につながれる。
地域の入口やハブになる場所にしたいですね。

すみだ経済新聞:
その先も見ていますね。

宮脇恒さん:
次は、市民記者や地域の人たちが集まれる小さな拠点も作りたいと思っています。
記事を書くだけじゃなく、人が出会い、学び、企画が生まれ、新しい挑戦が育つ場所です。

市民記者、商店街、地域企業、学生、行政。
いろんな人たちが交わって、一緒に地域を編集していく。
そんな場所ですね。
 

すみだ経済新聞:
市民記者の活動も広がりそうです。

宮脇恒さん:
今、市民記者は20人近くいますけど、単なる記者クラブじゃないと思っているんです。
地域のアンバサダーというか、街の熱量を届ける仲間ですね。

将来的には、子ども、中高生、大学生、市民、シニアまで、多世代が関わる「まちを編集する」仕組みにしていきたい。
地域の記録を次世代へつないでいく役割も担いたいと思っています。

 

すみだ経済新聞:
行政や企業との連携もあります。

宮脇恒さん:
行政は制度や公共性を持っている。
企業は実践や現場を持っている。
学校は未来を担う人材がいる。
市民は地域の熱量を持っている。
地域メディアは、それらをつなぐ役割だと思っています。

今後は、地域企業の広報支援や商品開発、地域資源の編集、学びの場づくりなども進めたいと思っています。
すみだビジネスラボもそうですし、地域で挑戦する人たちを応援する仕組みを作っていきたいですね。
 

すみだ経済新聞:
ニュースの先を見ていますね。

宮脇恒さん:
僕らがやりたいのは情報発信だけじゃない。
人をつなぎ、魅力を発掘し、まちを編集することです。


最終的には、すみだ経済新聞、すみだパレット、市民記者、SNS、行政連携を一つの循環にしていきたい。
ニュースを届けるだけじゃなく、地域の熱量を循環させる仕組みを作りたいですね。

すみだ経済新聞:
最後に、墨田への想いを。

宮脇恒さん:
今、僕の周りにいる墨田の人たちは、本当に最高な人ばかりです。

昔はいろいろ勉強もしました。
苦しい経験もしました。

何もない時から信じてくれた人たちなんです。
すみだの印象は人に優しい。
特に外から来た人が活躍できるという点で、素晴らしいまちだと思っています。

 

香港でアジアの価値を日本へ届け、日本文化を海外へ発信し、京都で地域メディアを立ち上げ墨田へ。
縦糸と横糸を紡ぎ、人をつなぎ、魅力を発掘し、まちを編集する。
シャノワとすみだ経済新聞が描く物語は、次のフェーズへ進もうとしている。

(取材・構成:森下八尋 / 監修:宮脇恒)

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