立川(たてかわ)で「子どもが戻る町」へ
20年後の青年部員を育てたいなら、今の子どもを楽しませた方が早い

立川三丁目の盆踊りといえば、墨田区内でも有数のにぎわいを見せる地域行事として知られる。盆踊り会場には多くの来場者が集まり、やぐらの上では子どもたちが太鼓を打ち鳴らす。その光景を支えてきたのが、立川三丁目町会青年部で活動する久保田健一さんだ。
子ども会や青年部活動、新入生歓迎バーベキューなどを通じて地域の子どもたちと関わり続ける久保田さんに、活動の原点について聞いた。
すみだ経済新聞:
立川三丁目の盆踊りは、今では地域を代表する行事の一つになっています。久保田さんが関わるようになった頃はどんな様子だったのでしょうか。

久保田健一さん:
全然違いましたね。
2002年に青年部へ入ったんですけど、その頃はかなり厳しかったです。
町会の担ぎ手は減っていましたね。神輿の会の皆さんに協力してもらって担ぎ手は確保できていましたが、盆踊りは昔ほど人が集まらなくなっていました。
すみだ経済新聞:
今の様子からは想像しにくいですね。
久保田健一さん:
そうだと思います。
当時の町会青年部の部長から「神輿だけでいいから手伝えよ」と誘われて入ったんです。
正直、最初はあまり気が進まなかったですよ(笑)。
すみだ経済新聞:
何か変わるきっかけがあったのでしょうか。
久保田健一さん:
このままだと町会も青年部も続かないんじゃないかと思ったんです。
若い人を増やそうと思っても簡単じゃない。
だったら子どもたちに地域を好きになってもらった方が早いんじゃないかと考えました。
すみだ経済新聞:
そこから太鼓が始まる。
久保田健一さん:
そうです。
2005年ですね。
娘が幼稚園に通っていた頃でした。
子どもたちと一緒に盆踊りの太鼓を始めました。

すみだ経済新聞:
最初は何人くらいだったのでしょうか。
久保田健一さん:
本当に少なかったですよ。
娘や友達が何人かいるくらいでした。
全然ですよ(笑)。
次の練習から来なくなった子もいました。
すみだ経済新聞:
そこから増えていった。
久保田健一さん:
友達が友達を連れてくるんです。
気が付いたら人数が増えていました。
子どもって面白いですよね。
自分が楽しいと友達を連れてくるんですよ。
すみだ経済新聞:
太鼓は子どもたちに人気だった。
久保田健一さん:
人気でしたね。
叩けば音が出る。
それだけで楽しいんです。
大人みたいに上手に叩こうなんて考えない。
とにかく楽しそうでした。
すみだ経済新聞:
盆踊りにも変化が出てきたのでしょうか。
久保田健一さん:
出ましたね。
太鼓を叩く子どもを見に親が来る。
祖父母も来る。
子ども一人に対して何人も応援に来るわけです。
気が付いたら会場の景色が変わっていました。
すみだ経済新聞:
立川三丁目の盆踊りが変わり始めた。
久保田健一さん:
そうですね。
子どもたちのおかげだと思います。
僕らが何かすごいことをしたわけじゃないです。
子どもたちが楽しそうにしていた。
その周りに人が集まった。
ただそれだけなんですよ。

すみだ経済新聞:
参加する子どもたちも増えていった。
久保田健一さん:
増えましたね。
最初は数人だったのが、気が付けば40人を超えていました。
その後は70人近くまで増えました。
すみだ経済新聞:
長く続けていると、うれしかった出来事もあったのではないでしょうか。
久保田健一さん:
ありましたね。
小さい頃に太鼓をやっていた子たちが、高校生になって戻ってきたんです。
「今年も祭りやりますよね。何か手伝いたいんですけど」って。
すみだ経済新聞:
覚えていたんですね。
久保田健一さん:
うれしかったですね。
子どもの頃の思い出って残るんだなと思いました。
うちの娘や息子も太鼓を続けていますし、今では太鼓の中心になって小さい子たちを教えています。
すみだ経済新聞:
今度は教える側になった。
久保田健一さん:
そうです。
昔教わっていた子が、今度は下の世代を教える。
そういう循環ができてきたのはうれしいですね。

すみだ経済新聞:
今は新入生歓迎バーベキューなども続けています。
久保田健一さん:
子ども会と青年部で一緒にやっています。
子どもたちが楽しむのはもちろんですけど、親同士が知り合うきっかけにもなっています。
すみだ経済新聞:
子どもたちには何を感じてほしいですか。
久保田健一さん:
景色ですね。
祭りのやぐらの上から見る景色だったり、みんなで準備する景色だったり。
やぐらの上に立つと、提灯に囲まれて普段とは全く違う景色が見えるんです。
そういうものを子どもの頃に感じてほしいと思っています。

すみだ経済新聞:
活動を続ける理由もそこにありますか。
久保田健一さん:
ありますね。
町会の担い手を増やしたいとか、青年部員を増やしたいとか、もちろんあります。
でも順番は逆だと思うんです。
まず地域を好きになってもらうこと。
そこから始まるんじゃないですかね。
すみだ経済新聞:
未来の地域づくりにもつながる。
久保田健一さん:
そうですね。
20年後の青年部員を育てたいなら、今の子どもたちを楽しませた方が早い。
ずっとそう思っています。
(取材・構成:森下八尋 / 監修:宮脇恒)
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